2001年3月14日水曜日

想い出は時の流れの中に(C市にて)

遠征



 市内での探索が主であった当コンテンツであったが、今回はC市への遠征を試みた。
 目的はもちろん、レアなアイテムを発見することである。
 田舎のオモチャ屋には、時として思わぬアイテムが眠っていることがあるのは、すでに実証済みである。
 ならば、さらなる田舎であるC市ならば、さらに驚くべきアイテムが隠されているのではなかろうか、と判断したわけである。



汝、迷うことなかれ



 JRで揺られること40数分、目的のC市へと到着した。
 元々、この町の郊外には祖母が住んでいるため、そちらの方面に関しては、ある程度の地理は知っている。
 その一方で、古くからのオモチャ屋などがある市街地の方には、ほとんど行ったことがない。
 だが、その市街地のオモチャ屋には私には忘れられない想い出があった。
 私的クソゲー筆頭の『フロントライン』を買ったのが、このC市のオモチャ屋なのである。
 15年ほど前に祖母に連れられた時の記憶を頼りに、私は市街地へと足を運ぶことにした。



 市街地を目指す前に、まずは駅沿いの通りにゲームショップがないかと周りを見渡す。
 私の記憶では、この近辺に『Zガンダム・ホットスクランブル』を中古で買った店があったはずなのだが……残念ながら、発見することができなかった。
 幸先の悪いスタートに、土地勘のない土地。
 不安要素を抱えたまま、私は薄れた記憶と方角だけを頼りに、市街地を目指すことにした。
 見覚えのない町なのだが、不思議なことに歩いている方角には自信があった。
 クソゲーの帰巣本能とでもいうのだろうか。



失われたアーク



 しばらく歩いていると、商店街が目に付いた。
 この商店街には見覚えがあった。いや、正確にはおぼろげな記憶がある。
 商店街を道なりに進んでいくと、正面左手の方角には白い大きな建物が見えてきた。
 私の記憶が正しければ、これはCデパートのはずである。
 私は自分の方向感覚と記憶力の確かさに小躍りしたい気分で、Cデパートを目指した。



 ところが……Cデパートは、とっくの昔に潰れていたらしい。
 今は、持て余した巨大なたたずまいをそのままに、廃墟同然にそこに建っているだけであった。
 C区のSは閉店後、すぐさま大型家電店が入店することになり、その巨大な建物は、市のIT戦略化のシンボルとなろうとしている。
 だが、こちらのCデパートは新たなテナントが入る予定すらなく、ただただそこに巨体を横たえているだけである……なんとも、哀れな姿である。
 Cデパートといって思い出深いのは、祖母に『ドンキーコングJr』を買ってとお願いしたのに、祖母が『ドンキーコング』を買ってきたことであろうか。
 この手のミスで年間、数万人の老人が孫の信頼を失っているという話は寡聞にして聞いたことがないかもしれない。



 Cデパート倒産はショックだったが、まだ近辺にはオモチャ屋がある。
 幸い、Cデパートとは交差点を挟んで正面にオモチャ屋が健在であった。
 記憶の中と変わらないたたずまいに、私はホッと胸を撫で下ろし、オモチャ屋を訪ねたのだが……。
 どうにも様子がおかしい。
 ペットの姿が目に付く。
 なんだ、これは……?
 と思い、店内を眺めてみると、なんとオモチャ屋がペットショップに変わっていたのである。
 ……『戦場の狼』と間違えて『フロントライン』を買ったこと、『マイティ・ボンジャック』を買おうと思って『ソロモンの鍵』を買ったら案外面白かったこと、などなど……。
 幼い日のファミコンの想い出が走馬燈のように蘇っては消えていった。
 結局、この近辺ではオモチャ屋を発見することができなかった。
 栄枯盛衰、諸行無常とはこのことなのだろうか……などと考えながら、私はとぼとぼと家路についたのであった。



掘り出し物



なし



購入品



なし



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