2000年12月2日土曜日

幻のマルチメディアマシン(C区Rにて)

■出会い



 私が「ワゴンセール」に山積みになったゲームを意識するようになったのは、C区にあるRというデパートでバイトするようになってからである。
 Rのオモチャ売り場の一角に設けられたワゴンセールスコーナー。
 その中でもひときわ目を引いたのが、超巨大ボックス仕様の『同級生2 初回限定版』 であった。
 登場キャラクタのフィギュア12体が同梱されているという代物なのだが、メーカーの思惑とは裏腹に初回限定版は大量に売れ残ってしまった。その巨大な箱は、どの店に行っても邪魔者扱いされながら、店の片隅に積まれているのが日常的な光景となっている。
 そんな『同級生2』は見慣れていたのだが、その脇に、大きさでは勝るとも劣らない不思議な箱が置かれていた。
 それが『メディアボックス』 であった。
 タイトーが開発した、テレビと接続するだけでインターネットが出来るという、いわゆるセットトップボックスのようなものらしい。ピピン@のようなものと言った方が、分かりやすいかも知れない。
 そればかりではなく、ゲームやカラオケまで出来るという、まさに夢のマルチメディアマシン……らしいのだが、そんなもの今まで見たことも聞いたこともなかった。
そもそも、セットトップボックスが成功した例なんて、とりあえず今の時点では聞いたことはない。
 よくも、こんなハードを開発したものだ……とタイトーに驚き呆れたものだが、同時にこんな代物を仕入れたRも大したものである。
 とりあえず、ワゴンセールということで半額で売られてはいたが、それでも2万円近い金額である。
 当然と言うべきか、いつまで経ってもメディアボックスは売れることはなく、その巨体をワゴンの中で窮屈そうにかがめていた……



■日常



 いつも、そこにあるメディアボックス。
 次第に私はメディアボックスの動向が気になり始め、オモチャ売り場の前を通るたびに、メディアボックスの所在を探すようになっていた。
 時にはゲーム売り場からワゴンが移動したりもしたが、それでもメディアボックスは『同級生2』と一緒に、寄り添うようにそこにいた。
「いつになったらメディアボックスが買われるのだろうか」、いつしか私は子を持つ親のような心境になっていた。



■別れは突然に…



 そして、その日は突然やってきた。
 Rに新たにサンリオの専門ショップがオープンし、その影響でオモチャ売り場が縮小された。
 そして……ワゴンセールのワゴンは撤去されていた。
 メディアボックスは、ない。  跡形もなく消えていた。
 誰かに買われていったのだろうか……?
 真相は分からない。
 ……まるで祭りの後のような物寂しさと、趣深い情緒のようなものが、私の心の内に残った。
 ワゴンセール……いつ消えるともわからない、その危うさと、売れないゲームのもの悲しさ。
 このメディアボックスの存在が、私にこのコンテンツを立ち上げさせるきっかけとなったのである。



■掘り出し物



メディアボックス



タイトー メディアボックス M88S 家庭用通信カラオケタイトー メディアボックス M88S 家庭用通信カラオケ
価格:¥ 41,790(税込)
発売日:



■購入品



なし



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